20111020

やりたい放題が詰まったADV 「サクラノート」



サクラノートクリアした! おもしろかった!
ので積極的にレビューを書きますよ。ネタバレほぼ無し。


「サクラノート 〜いまにつながるみらい〜」
2009年に発売されたDS用ソフト。開発は有限会社アウディオ。
暖かみのあるドット絵をふんだんに使用した
ちょっと不思議な物語が魅力の一本だが、
なんといっても特筆すべきは超豪華な開発陣!
音楽はあの「ファイナルファンタジーシリーズ」
最近では「ラストストーリー」などで有名な植松伸夫!
シナリオは「ファイナルファンタジー7」「キングダムハーツ」
古いところでは「探偵・神宮司三郎シリーズ」などの野島一成!!
そしてビジュアル担当は「ファイナルファンタジーシリーズ」などの
アートディレクターを務めた皆葉英夫
あとゲームデザイナーの上田晃。
という、このメンツなら大作ファンタジーRPGが
余裕で一本作れるだろ! とつい口走ってしまいそうなほど
全てが”豪華”これ以上の単語が見当たらない程、豪華なADVなのです。
公式ジャンルは「ナミダ舞うアドベンチャー」
遊んでみればこのジャンル名の意味はすぐわかるんだが、
「ナミダ舞うってそういう意味かよ!」とツッコんでしまうのは
ほぼ既定路線ですのであとで騙されたとか言わないように。


ADVとはいえ、本作の基本となるのは、
上方見下ろし視点の2Dグラフィックで描かれたマップを
ドット絵のキャラクターを操作してあちこち駆け回る、
懐かしのRPG風のシステム。雰囲気はMOTHERがちょっと近いか。
舞台となるのは主人公の「クロサワトオル」(任意で変更可)の
暮らす、春を過ぎてもなぜか散らない桜の木が立つとある町。
ある日、トオルの学校に隣町から一人の少女が転校してくる。
この「七海」という少女とトオル。七海の母タカコとトオルの父カナメ。
カナメとその妻ハルカ。そして散らない桜を巡る一連の騒動を
解決に導くため、町中を奔走することになる。
アクション風の戦闘シーンまであったりで賑やか。全4章。

さらにメインとなる「トオル(主人公)編」の他に、
七海の飼い犬ラインホルト、トオルの飼い猫トロイメライという
二つの別視点から物語を見ることもでき、
トオルが奔走している間の「一方その頃」を垣間みれたり、
普段は何を言っているかわからない彼ら動物の心情を
知ることができたり……というザッピングシステムのような
要素もある。ただしタダでは見られないようになっているのがクセモノ。
ラインホルトやトロイメライの視点を見るためには
「ナミダ」というものが必要になる。
この「ナミダ」はトオルたちがいろんなことを「経験」するたびに
入手することができ、各章ごとに最大1000個まで貯めることができる。
たとえば選択肢AとBがあった場合、Aを選択すると20ナミダが、
Bの場合は50ナミダがそれぞれ一度だけ入手できるとする。
当然一周目ではどちらかの選択肢しか選べないのだが、
一度クリアした章はもう一度最初からプレイすることが可能なので、
周回プレイをすることでナミダを蓄積していくことができるという塩梅。
他にも落とし物を届けたり、いろんな人に話しかけたりするたびに
「新しい経験」という実績やトロフィーのようなものが達成され、
ここでもまたナミダが手に入る。
要は細かな探索がゲームの鍵となっている、という感じだ。


シナリオは野島一成が担当しているだけあって、
完成度はなかなか高い。基本的にはトオルから見た
「少年の視点」で物語が進むのだが、彼の両親の諍いや
七海の離婚した両親の関係、トオルの友人たちまで
大人も子供も動物も、多数の人物を絡めつつも
決して複雑になりすぎないように明解に作られている。
でもこれは、やっぱり大人向けのシナリオだとは思うな。

よくできた人間なんてこのゲームには一人も出て来ない。
みんなそれぞれに欠点や弱さを抱えながら、
それぞれのやるべきことを精一杯こなそうとする。
もちろん失敗もする。大人も子供も関係なく。
決して「親」や「大人」という立場に頼らず、
またいわゆる「無口系」である主人公の心情描写も最小限で、
キレイゴトに終始しないありのままの物語の描き方は
野島一成の真骨頂と言ってもいいかもしれない。
「親だから」「大人だから」「主人公だから」という
立場に甘えた安直な展開にはせず、まずそれぞれのキャラクターの
「個」をしっかりと、良い面も悪い面も見せながら描くというのは
なかなかできることではないと思う。
そういう積み重ねがあるからこその、ラストのあの「語り」が
存分に活きてくるんじゃないかなぁ、と。
感動巨編、超大作……なんて言葉はまったく似合わないが、
暖かな雰囲気や巧みなセリフ回しにはグッと心を奪われるし、
泣けるところはけっこう泣ける。
トオルたちを超常現象から救うために、
妻のハルカに呆れられながらも解決の道を探ろうとするカナメの
「ヒーローは、孤独なのだ」
というセリフにはなかなか痺れた。

もちろん野島一成だけでなく、その個性を思う存分発揮した
植松伸夫の音楽はFFなどの大作の音楽しか知らないユーザーは
けっこう驚くんじゃないかってくらい独特で印象に残るし、
普段のファンタジー系の絵からは想像もできないような
ちょっとジブリ風な柔らかい皆葉英夫の絵柄もなかなかいい。
あと植松伸夫と言えば……。




いきなりチュートリアルキャラクターとして出て来たときは
どんな顔をすればいいのかわからなくなった。
なんで!? あんたコンポーザーでしょ!?



そして突然の宣伝。
あんたチュートリアルしにきたんでしょ!? やりたい放題か!
他にもいろんな意味で薄い笑顔にならざるを得ないような
熱弁を振るってくれる場面なんかもあったりで、やりたい放題か!
この80年代の同人誌みたいなノリを21世紀に商業でやるとかもうね。


あとは異常に凝ったキャラクター造形な。
ナミダを集めることで各章の登場人物に関する情報を
見ることができるキャラクター図鑑が解禁されるのだが、
この作り込みがはっきり言って異常。
「特に頑張らなくても勉強ができ努力もしないので
 遠からず並の成績に陥ることが予想される」って
割と全体未聞なキャラ付けをされてる主人公とか、
「フランスに憧れていたが、
 実際に行ってみたら犬のウンコ20回踏んで印象最悪だった」
なんてかなり本筋に関係ないハルカのプロフィールとか
いろいろすごいんだが、特に本作の裏主人公であるカナメ!
カナメは特撮オタクでゲーム制作の人という
限りなく親近感の沸くキャラクター造形なのだが、
案の定プロフィールがどう考えてもこのゲームの製作者の
誰かの私情が入りまくりで妙にリアル。
「最近のハードの進化についていけない」
「サブルーチンやマクロが好き」
「ファイル名に凝る」
「なんとかせねばと思いつつバックアップを忘れる」
ってそれはこのゲーム作ってるアンタのことでしょ!?

あとキャラクター図鑑と言えば、いろんなところからちょっとずつ
パクってるせいで逆に元ネタがわからなくなっているという
「古代戦士ナスカイザー」の造形も本気すぎて、こういうのは好きだ。
主人公のプロフィールが3ページなのにナスカイザーは
無駄に、無駄に6ページもあるという。


全体的に小品感はあるし、豪華スタッフが作ったゲーム!を期待すると
割と肩透かしをくらう部分も割とある。
単調でつまらなくて植松伸夫のバトル曲とファンファーレ以外に
存在価値がない戦闘パートや、周回プレイ前提の作りなのに
スキップがなかったり、その上ラインホルト編、トロイメライ編には
本編と重複する部分もかなりあるので同じ話を
何度も何度も見せられて退屈だとか、
せめて章ごとにもう少し細かくチャプター分けをして
好きなところをやり直せればよかったな……とか、
粗を探せばいくらでも出てくる。
これを「良ゲー」と言い切るのはけっこう難しいかもしれない。

でもスタッフが好き勝手に自分たちの作りたい物を
ドサッと盛り込んだ闇鍋的な雰囲気は嫌いじゃない。
ただ低予算でチープ、というだけではこうはならない。
一流のスタッフが、大作という枷から解き放たれて、
やりたいことを思いきりやる! 楽しんで作る! という
熱い息吹がプレイしてるこちらに伝わって来るようだった。
この特異なユニットで構成されたゲームを上田晃は
「新バンドのデビュー作」と表現したが、なかなか言い得て妙だと思う。

発売から二年近く経ってしまったが、あえて今オススメしたい。
発売当初にほとんど話題にならなかった上に
今でもこのゲームの話題を取り扱ってるサイトが全然引っかからないわ、
Wikipediaにすら項目がないわでどうも散々な結果だが、
今だからこそあえて再評価したい一本。
中古2000円前後が相場っぽいので、
見かけたら是非手に取ってみてください。
さすがに初回特典のCDはもう手に入らないだろうなぁ……
と思ったらアマゾンに普通にあった。うむむ。

サクラノート ~いまにつながるみらい~ 特典 オリジナルサウンドトラック「音の贈り物」付き

2 件のコメント:

  1. お久しぶりです
    ノーマです

    すごい自分の好みのゲームです
    アドベンチャーゲームは片っ端から遊んでるんですが
    スタッフが楽しんで作ってる感じのゲーム
    いいですね!
    システムの微妙な部分はきっと続編が出たりすれば
    改善されるけれど2年たって出てないってことは
    難しいのかもしれないですね

    サクラノートは元々興味はあったのですが
    ますます欲しくなっちゃいました

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  2. いつもどうもですー。
    なんていうかもう、本当に「スタッフが好き勝手に作った」感が強いんで、
    そのノリについていけるかどうかが大きいかもしれませんね。
    でもそのまとまりの無さ、コンセプトのブレが独特の味になっていて
    良くも悪くも個性的な一本ですね。オススメ。安いし。

    「あのFFとかを作ったスタッフが結集!」
    っていうと豪華なような、クーデルカなような。
    いやクーデルカも好きですが。

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