20111011

手を繋いでみた。ICO HDレビュー


つーわけで、とりあえずICOクリアしたので軽くレビュー。
ワンダもやらなきゃな。


「ICO」は2001年、まだ発売したてのホヤホヤだったPS2で
発売されたソニーのアクションゲーム。
言葉の通じない不思議な女の子の手を引いて
共に閉ざされた城を脱出する……というシンプルな物語は、
ステータス類の表示を一切省いたシンプルな画面、
細部まで作り込まれた3Dマップ、そして絶妙な謎解きという、
ゲームとして研ぎ澄まされた数々の要素と調和し、
当時のプレイヤーに鮮烈な印象を与えた傑作である。
それが2011年、1080p対応の完全HD作品としてブラッシュアップされ
我々の前に再びやってきた。ICO HDの誕生である。


元々がグラフィックに徹底的にこだわって作られた作品とあって
最近流行りのHD化とは非常に相性が良く、
少なくともこのICOというゲームにとって今回の再販は
ただの「ベタ移植」以上の意味を持っている。
この点は期待通りの出来で、ポリゴンモデルこそ
今の目で見ると粗さが感じられるものの、
陰湿な城や眩しいほどの草木の緑などの鮮やかさは
10年前のゲームが元とはとても思えない。
10年前のゲームなんだぜ、コレ!
当時でさえこのICOというゲームが描き出す世界の重量感は
相当なインパクトを持っていたが、それがHD化によって
より一層美しく、力強く深化している。
HDリマスターの流れに対する賛否両論には
個人的にどちらの言い分も理解できるのだが、
少なくともこのICO/ワンダに関しては
非常に有意義な移植と言っても問題ないと思う。

ゲーム内容はPS2版とまったく同じなので軽く触れるだけにするが、
本作にはHPや攻撃力などといったものが一切存在しない。
ゲームオーバーの条件は、プレイヤーであるイコが
高いところから落下して死亡する、あるいはイコが手を引く少女
ヨルダが謎の影のようなモンスターに連れ去られるか、の二つ。
それにしたって異常に丈夫なイコは目算10メートル程度の高さなら
落ちてもシリモチをつくくらいで平気だし、
モンスターの攻撃も受ければ倒れるが、ヨルダさえ無事であれば
何度殴られてもすぐに起き上がることができる。
このようにイコの打たれ強さはアクションゲーム界でも屈指であるが、
城の仕掛けを動かすにはヨルダの不思議な(魔法の?)力が必要なので、
イコ単独で進んでいくわけにもいかない。
まぁ男に産まれたなら少女の一人や二人、助けて当然ってモンですがね。

脱出を拒むのは難解な城の仕掛けの数々。
燭台に火を灯すと開く扉。動かして足場にできる木の箱。
よじのぼることができる鎖。手をかけて登れる壁のでっぱり。
感覚としては「ゼルダ」シリーズのダンジョンが近いか。
この謎解きがかなり絶妙なバランスで、
パッと見た時には「こんなの無理だよ! どうするんだよ!」と
思うのだが、じっくりとあたりを見回せば
必ず使えそうなものや登れそうな壁が見つかる。
難しすぎず、簡単すぎない。この辺の調整には
かなり気を遣ったのだろうと用意に想像できる。
インターネットでなんでも調べられる時代だが、
とにかくこのゲームの一周目に関しては、
なんの前情報もなく挑戦してみてほしい。
「全然わからない! もう無理!」となるギリギリのところで
必ず何かとっかかりが見つかるこのバランスは本当によくできてる。
ジャンプはかなり多用させられるが、アクションゲームとしての難度は
決して高くないので、アクション苦手な人でも手軽に遊べると思う。

そしてストーリー。本当になんてことない話なんだけど、
とにかく美しい背景、とにかくリアルな環境音、
イコやヨルダの、なんだかわからない不思議な言葉、
それらが織り成す繊細な雰囲気が実に心地よくて、
妙に心に刺さるものがある。ラストはなんていうか、
感動というわけではないんだけど、心底ホッとできる。
多くを語らない、無口なゲームではあるけれど、
この暖かな世界観は一度ハマると何年も何年も心に残り続ける。

手を繋ぐ、ということ。その一点に絞ってゲーム全体がデザインされており、
R1を押して手を握り、○ボタンを押して歩くという操作ひとつ取っても
「手を繋ぐ」形にちゃんとなっていることに気がつくだろう。
さらに、繋いだ時の相手の鼓動が伝わるような細かな振動。
暖かさまでじんわりとその手に伝わるような気になってくる。


良点が原作と同じなら、欠点もやはり原作と同じ。
このゲーム、カメラワークが非常に独特で、
ちょっと動くたびに振り回されるわ、見たいところが見えないわ、
たぶん謎解きや演出で意図的にやってる部分もあるだろうけど、
解法がわかっているのにジャンプで失敗……というのはやはり辛い。
特に終盤、橋でのイベント以降はアクション性が高めのステージが
連続するのだが、ここでカメラワークのヒドさが一気に露呈する。
ライティングの加減なのかなんなのか、このゲーム、
遠近感がイマイチつかみ辛い。特に手前から奥へ飛ぶようなシーンで
目標までどのくらいの距離があるのか、どのくらいの高さなのか
さっぱりわからず初回プレイではかなり混乱させられる。
この点はHD化された本作でも基本的に改善されていない。
今の技術で作るなら、もうちょっとなんとかできた場面も
あったんじゃないですかね……。昔からヒドいヒドいと言われてるのに
まったくなんの手直しもせずに出すというのは、
手抜きと言われても仕方ないと思う。
謎解きの完成度をこれだけ高くできる能力があるのに、
操作性の悪さで難易度を上げる理由なんて何もないじゃないですか。

スペースチャンネル5の時も同じようなことを言ったけど、
ただの小遣い稼ぎみたいな半端な移植はしないでほしい。
開発費は高騰してるのにゲームが売れなくなってる、とは言うが、
こういうユーザーから金を巻き上げること前提で
手を抜いた商品を売りつけたりするから
客が離れて市場が縮小していくんだとなぜ気付かないのか。
ベタ移植することに意義を見出す向きもあるだろうけど、
俺はそれにはちょっと賛成できない。


プレイ時間は5〜6時間。二周目はもちろん謎の答えがわかっているので
この半分くらいにはなるか。基本的には一本道で寄り道もほぼないので、
決してボリューム満点というわけではないが、密度の濃さは保証する。
トロフィーもちょっと頑張ればコンプできるレベル。
俺は終盤のジャンプで心折られたのでやりませんが……。
操作性に難はあるものの、今でも十分通用する出来だと思う。
ICOより面白いゲームはいくらでもあるだろう。
でもICOの面白さは、間違いなくICOでしか味わえない。
なかなかここまで個性的なゲームもないので、
未プレイの方、若年層の方は今回のHD化をきっかけに
ICOの世界に触れてみるのもいいんではないでしょうか。


あなたの魂は、繋いだ手に宿りましたか?


ICO/ワンダと巨像 Limited Box (特製ブックレット、プロダクトコード同梱)ICO

0 件のコメント:

コメントを投稿